ヒトは他者との距離を測ることで自分の存在を認識するものなのだそうです。
距離とは、物理的なものと心理的なものを合わせた複合的感覚。他者との距離を測り、他者から跳ね返ってきたもので自己を形作り、自分の居る座標を確認するのだとか。
他者とは、家族や職場や学校で出会う人はもちろん、直接には関係を持たない過去現在の著名人だったり芸術的著作物だったりもするでしょう。
僕が音楽をやる上で判断基準/目標にしているアーティストのひとりがジェフ・バックリーです。もちろん彼の創造性にはおよびもつかないのですが、僕にとっては普遍の輝きを放っている憧れの対象であり、迷いそうなときには真っ先に探し、進むべき道を示してくれる永遠で絶対的な存在のひとりです。
30歳の若さにして不慮の事故でなくなった彼の12回忌を記念してリリースされた作品がこの「GRACE AROUND THE WORLD」。海外版とは仕様の違いがあるのですが(映像無しのライブ盤CDが付いてたりするみたい)、インタビューと歌詞に字幕が付いてるDVD2枚組の国内盤が断然オススメです。
GRACE AROUND THE WORLD [DVD] / Jeff Buckley
前回のエントリーではジミヘン商法などとちゃかした表現を使いましたが、届いて内容を確認したら(僕にとっては)とんでもないお宝DVDでした。ディスク1(GRACE AROUND THE WORLD)は初見のライブ映像やインタビュー映像がほとんどで、ディスク2(Amazing Grace)のドキュメンタリーはジェフと親交のあった人物が2004年に制作したもの。僕はリアル号泣してしまいましたよ。
ディスク1で演奏の合間に挿入されているインタビューがこれまた涙もの。ジェフの音楽に取り組む姿勢がよく分かります。
僕たちの生きる社会はアートを殺す。社会は詩的なアプローチを嫌い、直感から生まれるものを軽視し、表現者は軽視され、アートの源は軽んじられている。
いつもGRACE(←日本語に適切な言葉がない)を求めていたい。GRACEがあれば銃に手を出さずに済む。
物事の本質をとらえると調和が生まれる、幸福に近づける。僕は根幹を知りたいんだ。
皆さんもきっと青臭くて読んでられねーよと思ったことでしょう。誰にも縛られたくないと盗んだバイクで走り出しそうですもんね。←若い人は分かんないだろうな。
でもね、ジェフは大マジなんです。しかもこの理想が彼の音楽では技術的にも精神的にも極めて高い次元で具体化されているのです。少なくとも、僕はそう感じます。僕は彼の音楽を聴くと、誰にも見せたことがない心の奥深く柔らかいところを鷲づかみされたような感覚になってしまうことがあります。正直に告白すると、取り乱してしまうことすらあります。セールス的にはぱっとしないジェフですが、できるだけ沢山の人に聞いてもらいたいと思っています。
ジェフの残した唯一のオリジナルアルバム「GRACE」を紹介したいと思ったのですが、アマゾンで検索したかぎり、現在国内盤はシングル抱き合わせ企画盤だけみたいです。ちゃんと調べてませんけど(笑)。
GRACE+EPs [Limited Edition] / Jeff Buckley
値段が高いのになぜこれをオススメするかというと、ディスク3に収録されているライブバージョンの「Mojo Pin」が最高だから! 導入部が "Melt on your tongue ♪" ってやつです。14分弱もあるアレンジになってますけど、僕はベストテイクだと思ってます。痺れますよ!
このDVD「GRACE AROUND THE WORLD」のおかげで、地に墜ちていた感のある僕のミュージッシャンとしてのモチベーションがちょっと上向いてきました。彼のような表現者にはなれないけれど、彼の選んだものと同じ道を選んだつもりでしたからね。
皆さんもぜひジェフの音楽に触れてみてください。
最後に YouTube からいくつか。
Hallelujah / Jeff Buckley
